CDの内容について
収録曲
私の師,辻幹雄が作曲したオリジナル曲です。辻はこれまでに多くのオリジナル曲を収録したCDを発表しています。このCDに収録した楽曲は,happy birthdayを除いて辻が30代で発表した最初のCD『風の標(しるべ)』に収録された初々しい楽曲群です。その後、次々と深遠な世界を表していく作風とはまた違った瑞瑞(みずみず)しさに溢れた楽曲です。師がこれらの楽曲を私に託してくれたことがこのチャリティーに繋がりました。
CD冒頭は、組曲「春のゆくへ」から2曲(『春のゆくへ』『白鳥の歌』)を収録しています。この組曲は,若狭を舞台とした飛鳥時代の物語を基調としたある歌人の詩に辻が曲をつけたものです。白村江の戦いで若狭に流れ着いた一人の兵士が遙か彼方の故郷を想って海岸に佇んでいる姿を頭に描いて聴くといいかも知れません。
CDの表題になっている『ハッピー・バースデー』は、師がこのCDに収録するようにと楽譜を頂いてレコーデイングした曲です。「この世に生まれて来てくれてありがとう」という思いが込められていると話してくれました。
『春のニンフ(妖精)』『翼』『木もれ日の中で』、それぞれの曲名に相応しい詩情が演奏から聴く人の心に伝わると想います。
辻幹雄
世界的なギター奏者・作曲家であり,このCDの監修者です。このCDは辻幹雄の名において世に出ることを私は肝に銘じなければなりません。
私が音楽を捨て、弁護士として人生の再出発をした時には、師の辻幹雄は、11弦ギターにおいて世界的なコンポーザー・ギタリストとしてその名を知られる存在になっていました。師と言いながらも当時は辻さんも私と同じ20代でまだ「海のものとも山のもの」とも知れない存在でしたから偶然にそれを知った時すでにギターを辞めた私には辻さんのその後の姿が当然のような、不思議なような、何とも複雑な思いが巡ったことを憶えています。
30代の新進気鋭のギタリストであった辻さんが世界初の11弦ギターオリジナル曲をカーネギーホールで公演して世界的評価を得た楽曲群が彼の最初のCD『風の標』です。辻さんは今も日本全国津々浦々で来演を心待ちにしている人たちのために全国を行脚して演奏しています。11弦ギターの制作者であるスウェーデンのゲオルク・ボリーンは彼の演奏に感動して涙を流し、11弦ギターを世界に広めることを託したそうです。辻幹雄がボリーンさんの11弦ギターに魂を吹き込んだと言って決して過言ではありません。
11弦ギター
スウェーデンの11弦ギター制作者で、かの国では人間国宝的な存在であり、ノーベル賞授賞式の式典では彼の11弦ギターが演奏されると聞いています。私の楽器は1973年の作品です。元もと日本国内では限られた数しか存在しませんが、弾きこなすのが非常に難しいため定期的に市場に姿を現し、師を通じて私の手に届きました。ルネッサンス・バロック期の古楽器リュートのための音楽をより忠実に演奏すべく開発された楽器でしたが、辻幹雄によって眠っていた真の姿を世に表して新しい世界が開かれたことに製作者であるボリーンさんの驚きと喜びはひとしおだったことと思います。
見た目は普通のクラシックギターと似ていますが、指板(目盛りがある柄の部分です)が少し短くて音程が全体に短3度高く、普通の6本の弦に5本の低い開放弦が加わって重低音が出せるのが特徴です。このような音域の広さに止まらず、共鳴や倍音によって普通のギターにはない明るく透明感のある音色が持ち味で、さらに重厚な低音の響きによって透明で深遠な世界を表現することができます。それは元もとこの楽器が備える古楽器の特性でもあり、王宮や貴族のサロン楽器であったリュートが世俗に広がって行く過程で現代のギターとなった歴史がよく分かります。
活動報告
このコーナーでは、具体的なチャリテイー活動とその成果を報告したいと思います。
以上、よろしくお願い申し上げます。